专利摘要:
本発明は、ポリオレフィンブレンドおよびナノコンポジット、ならびにそれらの作製方法を提供する。実施形態では、本発明のブレンドまたはナノコンポジットは、少なくとも1つのポリオレフィンおよび少なくとも1つのイオン液体、および/または、1つの修飾カーボンナノフィラーを含んでもよい。実施形態では、少なくとも1つの修飾カーボンナノチューブは、少なくとも1つのイオン性化合物で処理してもよい。
公开号:JP2011506645A
申请号:JP2010537096
申请日:2008-12-05
公开日:2011-03-03
发明作者:シャオ,ベンジャミン,エス.;チュ,ベンジャミン;マ,ホンヤン;信志 谷口
申请人:ザ リサーチ ファンデーション オブ ステート ユニバーシティ オブ ニューヨーク;
IPC主号:C08L23-00
专利说明:

[0001] (関連出願の相互参照)
本願は、2007年12月5日出願の米国仮特許出願第60/992,475号に基づく利益および優先権を主張するものであり、この出願の全教示内容は、参照することで本明細書に組み入れられる。]
[0002] (米国政府の権利)
本発明は、全米科学財団(NSF)の助成金DMR0454887を元に、米国政府の援助によりなされた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。]
背景技術

[0003] ポリオレフィンの物理的および/または機械的特性を向上させるための方法および技術が知られている。例えば、高性能超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)フィルムおよびファイバーの開発は十分に確立されている。これは、一連の独特の処理技術を使用して、最終生成物における高い絡み合い密度の生成を避けることによって達成することができる。そのような技術としては、ゲル状態でのフィルム延伸およびファイバースピニングが挙げられる。しかしながら、これらの方法のいくつかに対する1つの欠点は、その方法が大量の溶媒を必要とすることである。溶媒を用いる従来の熔融処理技術によって処理された場合、UHMWPE鎖は、通常、非常に高い絡み合い密度を生じ、結果として、最終生成物における非常に低い延伸能力または脆性を生じる。]
[0004] 単層ナノチューブ(SWNT)、多層ナノチューブ(MWNT)、およびカーボンナノファイバー(CNF)を含むカーボンナノチューブは、近年、ポリマーコミュニティにおいて大いなる注目を受けている。カーボンナノチューブおよびポリマーマトリックスに基づいた非常に靭性な複合材料を開発するための努力がなされている。例えば、ある研究では、ポリビニルアルコール(PVA)/単層カーボンナノチューブ(SWNT)ナノコンポジット繊維の非常に靭性な性能が実証されている。Daltonら、「Super−tough Carbon−Nanotube Fibres」Nature(2003),Vol.423,p.703。]
[0005] これらのナノ構造の材料は、それらの優れた機械的強度、優れた熱伝導性および導電性について認識されており、種々のポリマーの特性を改善するために利用してもよい。]
[0006] カーボンナノファイバーは、高温反応における触媒用の支持体、熱管理、エラストマーの増強、液体および気体に対するフィルター、および保護クロスの成分として、強化複合材料に潜在的に有用である。カーボンまたはポリマーのナノファイバーは、強化複合材料、酵素および触媒のための基材、植物に殺虫剤を適用すること、快適さおよび保護作用を改善した繊維製品、ナノメートルスケールの寸法を有するエアロゾルまたは粒子に対する高度なフィルター、エアロスペース熱管理への応用、ならびに温度および化学環境の変化に対する迅速な応答時間を有するセンサーにおける用途を見出す可能性がある。]
[0007] 機械的増強の場合、カーボンナノチューブを含むポリマーナノコンポジットについて刊行された研究は、改善は、付加的なものにすぎないことを示す;上記のDaltonらによって実証されたポリビニルアルコール(PVA)/SWNTナノコンポジット繊維の超靭性な性能の予測よりも実質的に低い。]
[0008] 従って、そのようなナノファイバーを含む複合材料として、強度および難燃性能力の強化を含む、機械的および電気的特性を強化したナノファイバーが望ましい。]
[0009] 本発明によれば、イオン液体とともに機能性イオン液体および/または表面修飾カーボンナノフィラー(例:単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェンシート、グラファイトナノ粒子)を含有する新クラスのポリオレフィンブレンドおよびナノコンポジットを提供する。イオン液体の疎水性尾部(例:長鎖アルキル置換基)は、ポリオレフィン(例:ポリエチレン、ポリプロピレン、これらのランダムおよびブロック共重合体)と可溶化でき、イオン液体の陽イオン頭部は、カーボンナノフィラーのグラフェン面のみならず芳香族染料および抗菌剤と強力かつ安定なπ−π相互作用を形成し得る。これにより、帯電したイオン液体は、ポリオレフィンへの可塑剤(粘度調整剤)として、多成分ポリオレフィンブレンドへの相溶化剤として、カラー染料、分子指紋剤(例:蛍光剤)、および抗菌剤と安定な錯体を形成し得る官能化剤として用いることができる。]
[0010] カーボンナノフィラー(例:単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェンシート、およびグラファイトナノ粒子)は、表面相互作用を通じて機能性イオン液体を運ぶナノスケールビヒクルとして用いることができ、補強剤としても機能し得る。]
[0011] 本発明の実施形態によれば、ポリマーブレンドを提供する。ポリマーブレンドは、少なくとも1つのポリオレフィンと少なくとも1つの修飾カーボンナノフィラーとを含んでもよく、少なくとも1つの修飾カーボンナノフィラーは、少なくとも1つのイオン性化合物で処理されている。]
[0012] ポリマーブレンドの作製方法も本発明によって考えられる。本方法は、少なくとも1つのカーボンナノフィラーを得る工程と、少なくとも1つのカーボンナノフィラーを少なくとも1つのイオン性化合物で処理し、修飾カーボンナノフィラーを生成する工程と、修飾カーボンナノフィラーをポリオレフィンとブレンドし、ポリマーブレンドを生成する工程とを含んでもよい。]
[0013] 本発明の別の態様によれば、ポリマーブレンドを提供する。ポリマーブレンドは、少なくとも1つのポリオレフィンと少なくとも1つのイオン液体とを含んでもよい。]
[0014] 本発明の前述および他の態様、特徴、および利点は、添付図面と組み合わせて記載されている以下の詳細な説明から明らかになるであろう。]
図面の簡単な説明

[0015] 超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)およびイオン液体に基づいたゲルスパンファイバーの調製用システムの概略図である。
UHMWPE/イオン液体ブレンドに基づいたゲルスパンファイバーの引張特性のグラフである。
延伸比の関数として最終延伸ファイバー(「FDY」)の引張特性(弾性率、伸び率、および引っ張り強さ)のグラフである。
UHMWPE/溶媒混合物の線形せん断粘弾性のグラフである。
UHMWPE/溶媒混合物のせん断粘弾性のグラフである。
本発明によるイオン液体によって修飾されたカーボンナノフィラー(「CNF」)の概略図である。
CNFをイオン液体と化学的にグラフトする方法の図である。
CNF、酸化CNF、およびイオン液体IVグラフト化CNFのグラフである。
CNFをイオン液体と化学的にグラフトする方法の図である。
デカリン中のイオン液体修飾カーボンナノフィラー(「iCNF」)の化学的安定性を示すグラフである。
iCNFおよび超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)ナノコンポジットの熱安定性を示すグラフである。
本発明によるナノコンポジットの応力ひずみ曲線のグラフである。
ナノコンポジットのレオロジー挙動のグラフである。
延伸ナノコンポジットの広角X線回折(「WAXD」)パターンの概略図である。
引張変形中の延伸ナノコンポジットのWAXDパターンおよびX線小角散乱(「SAXS」)パターンの概略図である。
延伸中のナノコンポジットの結晶化度のグラフである。
UHMWPEおよびイオン液体修飾多層カーボンナノチューブナノコンポジットに基づいたファイバーの最大延伸比のグラフである。]
[0016] 本発明によれば、イオン性化合物とともに機能性イオン液体、および/または、表面修飾カーボンナノフィラー(例:単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェンシート、グラファイトナノ粒子)を含むクラスのポリオレフィンブレンドおよびナノコンポジットを開示する。実施形態では、イオン性化合物は、標準温度および圧力、例えば、約0℃〜約100℃および約90kPa〜約110kPaでイオン液体であってもよい。]
[0017] 本発明によれば任意のポリオレフィンを利用してもよい。ポリオレフィンの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、高圧低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、修飾ポリエチレン、これらのランダムおよびブロック共重合体、それらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、超高分子量ポリエチレン(UHMPE)を含む超高分子量ポリオレフィンを利用してもよい。]
[0018] 任意の適当なイオン液体を利用してもよい。例えば、1−ドコサニル−3−メチルイミダゾリウムブロミドイオン液体(本明細書では「イオン液体I」と称する)、1−ドコサニル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファートイオン液体(本明細書では「イオン液体II」と称する)、1−ヒドロキシエチル−3−ドコサニルイミダゾリウムブロミド(本明細書では「イオン液体III」と称する)、および1−アミノエチル−3−ドコサニルイミダゾリウムブロミド(本明細書では「イオン液体IV」と称する)である。これらの合成については、以下の実施例において詳しく説明する。CNFsを修飾するのに用いてもよい適当なイオン液体は、以下の表1に列記する。ここで、Brはブロミドであり、BF4はテトラフルオロボラートであり、PF6はヘキサフルオロホスファートであり、Tf2Nはビス(ペルフルオロエチルスルホニル)イミドである。]
[0019] ]
[0020] イオン液体は、粘度調整剤(可塑剤)として、なおかつ、カラー染料、分子指紋剤(例:蛍光剤)、および抗菌剤を含む多成分ブレンドへの相溶化剤として機能することができる。イオン液体の非イオン性部分(例:長鎖アルキル置換基)は、ポリオレフィン(例:ポリエチレン、ポリプロピレン、これらのランダムおよびブロック共重合体)と相溶可能である。]
[0021] 任意の適当なカーボンナノフィラーを利用してもよい。適当なカーボンナノフィラーとしては、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェンシート、およびグラファイトナノ粒子が挙げられる。本明細書で利用してもよい適当なポリオレフィンおよびカーボンナノフィラーのみならずそれらの組み合わせのさらなる例としては、2003年9月5日に出願された米国仮特許出願第60/500,812号に基づく優先権を主張する2004年9月3日提出の「Nanocomposite containing polyolefin and surface−modified carbon nanotube fibers with super−tough performance」と題された国際公開第2005084167号として公開されている所有者共通の国際出願第PCT/US2004/028767号に開示された材料が挙げられる。それら内容全体を参照により本明細書に引用したものとする。]
[0022] イオン液体は、カーボンナノフィラー(CNF)と組み合わせてもよい。イオン液体のイオン性部分は、カーボンナノフィラーのグラフェン面のみならず、いくつかの芳香族染料および抗菌剤と強力かつ安定なπ−π相互作用を形成することができる。]
[0023] 表面修飾CNF(例:単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェンシート、グラファイトナノ粒子)は、以下の実施例、および疎水性尾部(例:長鎖アルキル置換基)を含有するイオン液体との共役を含む当業者の範囲内の同様の方法に記載されているように調製することができる。このクラスのカーボンナノフィラーは、以下の実施例および当業者の範囲内の同様の方法にさらに記載されているように、ポリオレフィン(例:ポリエチレン、ポリプロピレン、およびこれらのランダムおよびブロック共重合体)と相溶可能である。]
[0024] カーボンナノフィラー(「CNF」)(例:単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェンシート、およびグラファイトナノ粒子)は、表面相互作用を通じて機能性イオン液体を運ぶナノスケールビヒクルとしても使用でき、補強剤としても機能できる。]
[0025] 一実施形態では、長鎖アルキル置換基を有する陽イオン性イオン液体およびカーボンナノファイバー(CNF)とのその安定な錯体を用いて、UHMWPEの加工性、機械的特性(即ち、伸び率および靭性)、および機能性を向上することができる。UHMWPE材料は、溶融加工、高不活性(着色し難い)が難しく、より大きな鎖の絡み合いにより破断伸び率が低いことが知られている。イオン液体のカチオン部分は、カーボンナノファイバーのパラ−アレーン表面と強力なπ−π相互作用を形成することができる。これにより、表面修飾カーボンナノファイバー(イオン液体による)は、UHMWPEマトリックスに容易に分散することができ、イオン液体修飾CNFの独特な特性は、UHMWPEの靭性のみならず、ポリマーマトリックスにおける分子染料の固着を大幅に改善することができる。表面修飾カーボンナノフィラーを含有するポリオレフィンナノコンポジットを用いて、新クラスの機能性ファイバーおよびフィルムを生成できることが明らかである。]
[0026] 本発明のナノコンポジットは、約0.01重量%〜約30重量%の修飾CNF、実施形態では、約0.05重量%〜約15重量%の修飾CNF、他の実施形態では、約0.1重量%〜約5重量%の修飾CNFを含有してもよい。従って、本発明のナノコンポジットは、約99.99重量%〜約70重量%のポリオレフィン、実施形態では、約99.95重量%〜約85重量%のポリオレフィン、他の実施形態では、約99.9重量%〜約95重量%のポリオレフィンを含有してもよい。]
[0027] 得られたナノコンポジットを用いて、市販の機器および技術によってファイバーまたはフィルムを形成することができる。これらは、修飾カーボンナノファイバーを整列させる単−軸/二軸伸張の有無にかかわらず、溶融紡糸またはゲル紡糸により繊維状にするかあるいは、溶融鋳造またはゲル鋳造によりフィルム状にすることができる。これにより、修飾カーボンナノファイバーへの応力を最小限にし、機械的および電気的特性の向上のみならず難燃特性も向上する。]
[0028] 実施形態では、本発明のナノコンポジットは、Ranら、「In−Situ Synchrotron SAXS/WAXD of Melt Spinning of Modified Carbon Nanofiber and Polypropylene Nanocomposite」,from ACSPMSE,89,735−736(2003)に記載されている処理に従ってファイバーに紡糸することができる。この内容全体を参照により本明細書に引用したものとする。]
[0029] 別の実施形態では、本発明のナノコンポジットは、当業者の範囲内の技術を利用してフィルムに生成してもよい。フィルムを形成するための適当な方法としては、押し出し、溶融プレス、吹き出し、射出成形、および/または熱成形が挙げられるが、これらに限定されない。]
[0030] 実施形態では、フィルムは、修飾CNF/UHMWPEナノコンポジットを約100℃〜約210℃の温度、実施形態では、約140℃〜約200℃の温度、他の実施形態では、約170℃〜約190℃の温度に加熱し、約0.5MPa〜約10MPaの圧力、実施形態では、約1.0MPa〜約5.0MPaの圧力、他の実施形態では、約1.5MPa〜約2.5MPaの圧力でフィルムをプレスする溶融プレス法を利用して形成することができる。ナノコンポジットは、約1分〜約30分、実施形態では、約3分〜約10分、他の実施形態では、約4分〜約6分の間、この圧力下でプレスし続けてもよい。得られたフィルムは、約0.05mm〜約2.5mmの厚さ、実施形態では、約0.1mm〜約1.0mmの厚さ、他の実施形態では、約0.15mm〜約0.5mmの厚さであってもよい。]
[0031] 以下の実施例は、本発明の実施形態を示すために提出されている。これらの実施例は、説明のみを目的にしているに過ぎず、本発明の範囲の限定を意図するものではない。また、部および百分率はすべて、別段の指定がない限り重量による。]
[0032] 本実施例で利用したUHMWPE粉末は、約6,000,000g/molの分子量を有しており、Basell、USAから入手した。カーボンナノファイバー(CNF、PR−24−HHTPyrograf Products,Inc.から入手)に熱処理を施し、あらゆる非炭素材料を除去した。受け取ったままの状態のCNFの一般的なモルフォロジーは、平均直径が70nmであり、長さが50〜100μmであった。受け取ったままの状態のCNF試料はクリーンであることが確認されたため、さらなる精製手順は行わなかった。]
[0033] 1−メチルイミダゾール、1−ブロモドコサン、1−ドコサニルイミダゾール、2−ブロモエタノール、2−ブロモエチルアミンヒドロブロミド、ヘキサフルオロリン酸(60%水溶液)、および他の全ての試薬は、Aldrichから購入し、受け取ったままの状態で用いた。]
[0034] 熱重量分析(TGA)走査した試料を空気流下にて60℃〜800℃まで10℃/分で回収した。1H NMR(核磁気共鳴)スペクトルをCDCl3およびDMSO−d6を溶媒として25℃で取った。溶融圧縮したフィルム試料全部を修正引張装置を用いて室温で一軸延伸し、対称変形を行った。引張装置の顎部間の元の長さは10mmであり、選択した伸張率は約5mm/分である。平行板形状(直径25mm)を備えた応力制御レオメータを用いて小振幅振動せん断(SAOS)測定を行った。測定は180℃で行った。0.005<ω<100rad/sの周波数窓で周波数スイープを行った。せん断ひずみ振幅は、線形粘弾性領域でγ=0.5%であった。ドライ窒素を維持し、高温での酸化による劣化を抑制した。In−situ広角X線回折(WAXD)およびX線小角散乱(SAXS)実験も行った。使用した波長は0.1371nmであった。WAXDの試料−検出器間距離は119.0mmであり、SAXSの試料−検出器間距離は1769.0mmであった。試料の伸張中に二次元MAR−CCDX線検出器を用いてリアルタイムのデータを集めた。一般的な画像取得時間は画像1枚当たり20秒であった。]
[0035] 実施例1
1−ドコサニル−3−メチルイミダゾリウムブロミドイオン液体(本明細書では「イオン液体I」とも称する)の合成。合成経路を以下に示す。



約2g(0.025mol)の1−メチルイミダゾールと、10.7g(0.026mol)の1−ブロモドコサンとを20mLのアセトニトリル中に溶解させた。混合物を85℃で24時間還流し、その後、室温に冷却した。得られた試料(ケーキ状(cake like))を濾過し、エチルエーテルで3回洗浄した。真空炉で乾燥させた後、最終生成物である1−ドコサニル−3−メチルイミダゾリウムブロミドを白色粉末として得た。この手順の収率は、82.9℃の融点(Mp)で81.4%であった。1H NMR(溶媒としてCDCl3、δ、ppm)のスペクトルは、10.713(N−CH−N、s、1H)、7.274(N−CH−CH、s、1H)、7.218(N−CH−CH、s、1H)、4.310(N−CH2、t、2H)、4.130(N−CH3、s、3H)、1.918(N−CH2−CH2、m、2H)、1.248(N−CH2−CH2−(CH2)19、m、38H)、0.874(CH3、t、3H)であった。]
[0036] 実施例2
1−ドコサニル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファートイオン液体(本明細書では「イオン液体II」と称する)の合成。合成経路を以下に示す。



約4g(0.008mol)の1−ドコサニル−3−メチルイミダゾリウムブロミドを150mLの水に分散させ、その後、2.0mL(0.014mol)のヘキサフルオロリン酸水溶液を連続攪拌下で該懸濁液にゆっくりと滴下した。混合物を室温で24時間攪拌した。CH2Cl2を次に加え、2層混合物を生成し、水層を除去した。CH2Cl2を蒸発後、白色固体を中性になるまで水で洗浄した。粉末生成物を真空炉で乾燥させた。この手順の収率は、89.8℃の融点で95%であった。1H NMR(溶媒としてCDCl3、δ、ppm)のスペクトルは、8.541(N−CH−N、s、1H)、7.264(N−CH−CH、s、1H)、7.228(N−CH−CH、s、1H)、4.135(N−CH2、t、2H)、3.920(N−CH3、s、3H)、1.860(N−CH2−CH2、m、2H)、1.248(N−CH2−CH2−(CH2)19、m、38H)、0.875(CH3、t、3H)であった。]
[0037] 実施例3
UHMWPE/イオン液体二成分ブレンドの調製。
イオン液体およびデカリン溶液を70℃で約5分間加熱し、溶液を均質化した。この溶液に所望量のUHMWPEを次に加え、得られた混合物を攪拌下で約0.2℃/分の速度で約140℃に加熱し、約140℃で約1時間保持した。その後、溶液を室温に冷却し、ポリマーブレンドを濾過により分離し、真空炉にて約60℃で乾燥させ、大部分のデカリンを除去した。2軸混合機(DACA instruments)を用いて、約170℃で約5分間、試料を0.5重量%(UHMWPEの量に基づき)の酸化防止剤と溶融混合した。回収した試料を真空炉にて約80℃で乾燥させ、減量が0〜200℃の温度範囲内で0.5%以内になるまで、TGAにより測定し、重量を一定にした。最終試料を厚さ約0.3mmの板状フィルムに約180℃で溶融圧縮した。調製二成分混合物であるUHMWPE/ILの組成物を表2に示す。]
[0038] ]
[0039] 実施例4
UHMWPE/イオン液体二成分ブレンドに基づいたゲルスパンファイバーの調製およびその特性。
UHMWPE(Hizex340M)およびイオン液体(実施例1の試料、C22Br)の二成分混合物を調製した。実施例3の手順に基づいた試料調製の概略図を図1(A)乃至1Cに示す。図1(A)は、デカリン、酸化防止剤のBHT、イオン液体、およびポリマーの溶液調製を示す。イオン液体濃度は0.06重量%であり、ポリマー濃度は6重量%であり、混合温度は約160℃であった。この二成分ブレンドのファイバーゲル紡糸の概略図を図1(B)に示す。直径約0.8mmの穴を1つ有し、スループット1.0g/分、エアギャップ50mm、および巻き取り速度20m/分の紡糸口金を用いて、約170℃の温度(紡糸口金)で紡糸が起こった。ファイバー処理の後延伸条件(2延伸シーケンスを適用した)を図1(C)に示す。これらの処理において、1回目の延伸温度は約130℃であり、2回目の延伸温度は約145℃であった。1回目の延伸比は約4.0であり、2回目の延伸比は約2.0であった。図1(C)に示すように、第1延伸により未延伸糸(「UDY」)を延伸し、部分延伸糸(「PDY」)を得、次いで第2延伸によりこれを延伸し、最終延伸糸(「FDY」)を得る。純粋なUHMWPEおよびUHMWPE/イオン液体二成分ブレンド(全紡糸は同一条件)のゲルスパンファイバー間の繊維特性の比較を以下の表3に示す(PE=ポリエチレン、IL=イオン液体、η=粘度)。図2は、UHMWPE/イオン液体ブレンドに基づいたゲルスパンファイバーの引張特性も示す。] 図1 図2
[0040] 最終延伸ファイバー(FDY)の引張特性(弾性率、伸び率、および引っ張り強さ)を延伸比の関数として図3(A)乃至3(C)に示す。二成分混合物のUHMWPE/イオン液体ゲルスパンファイバーの方がより高い延伸性を示し、より高い引張力をもたらす。] 図3
[0041] 実施例5
溶液粘度特性。
イオン液体の追加の有無によるUHMWPE/溶媒混合物に基づいた溶液粘度を特徴付けた。試料の調製手順は以下の通りであった。UHMWPE試料(Hizex340M、[η]:21.5dL/g)を用いた。選択された試料はパラフィン(Mn〜500)であった。酸化防止剤はBHTであった。イオン液体(実施例1の試料、C22Br)を含有する混合物の重量比は、PE/IL/BHT/パラフィン=5/0.01/0.05/95であった。レオロジー試験条件は以下の通りであった。使用した装置はRheometer(ARES、TA Instruments、USA)であった。測定モードには、約150℃の温度で、連続せん断流および振動せん断流の両方が含まれた。図4は、イオン液体の有無によるUHMWPE/溶媒混合物の振動せん断流によって測定された線形せん断粘弾性のプロファイルを示す。図5は、連続せん断流によって測定されたせん断粘弾性を示す。図4および図5は、イオン液体を含む溶液がより低いせん断粘度を示す。] 図4 図5
[0042] 実施例6
イオン液体によるCNFの物理的修飾による、イオン液体およびCNF(修飾CNF)を含むナノコンポジットの生成。
上記の実施例1および2と同様、いったんイオン液体を調製すると、図6に示すように、これらを用いてCNFを修飾した。イオン液体およびCNFの比例混合物を2.0mLのデカリン中で調製した後、約70℃で約1時間音波処理した(別個の2つの試料を調製した:第1の試料は、上記実施例1からのイオン液体Iを含み、第2の試料は、上記実施例2からのイオン液体IIを含んだ)。その後、混合物を濾過し、大量のデカリンで3回洗浄した。試料ごとにCNFを修飾した最終生成物を約24時間真空乾燥させた。MWNT表面上のイオン液体I頭部のπ積層構造の概略図を図6に示す。] 図6
[0043] 実施例7
アニオン交換法によるCNFの選択的物理修飾。
約0.2g〜約2.0gのイオン液体Iと、実施例5に記載されたH2SO4/HNO3=3/1(v/v)の酸性混合物によって調製された0.2gの酸化CNFとを水に分散させ、それぞれ別々に、約1時間音波処理した。懸濁液を組み合わせた後、約0.1mL〜約1.0mLのHPF6水溶液を攪拌しながら加えた。混合物を2層に分離させ、iCNFは上層として懸濁された。iCNF上層を次いで濾過し、水で洗浄し、黒色固体としてiCNFを得、室温で1日真空乾燥させた。]
[0044] 実施例8
1−ヒドロキシエチル−3−ドコサニルイミダゾリウムブロミド(イオン液体III)および1−アミノエチル−3−ドコサニルイミダゾリウムブロミド(イオン液体IV)によるCNFの化学的修飾。
1−ヒドロキシエチル−3−ドコサニルイミダゾリウムブロミド(イオン液体III)の合成。イオン液体IIIを以下のプロセスを用いて合成し、1HNMRスペクトルによって特徴付けた。合成経路を以下に示す:



約3.76g(0.010mol)の1−ドコサニルイミダゾールと約1.45g(0.012mol)の2−ブロモエタノールを100mLのアセトニトリル中に分散させた。混合物を攪拌条件下にて90℃で約24時間還流させ、その後、室温に冷却した。沈殿物を濾過し、エチルエーテルで洗浄した。真空炉で乾燥させた後、最終生成物である1−ヒドロキシエチル−3−ドコサニルイミダゾリウムブロミドを得た。収率は約90.8%であり、融点は約76.5℃であった。1H NMR(溶媒としてDMSOd6、δ、ppm)のスペクトルは、9.107(N−CH−N、s、1H)、7.743(N−CH−CH、s、1H)、7.712(N−CH−CH、s、1H)、4.192(N−CH2−CH2−OH、t、2H)、4.141(N−CH2−CH2−OH、t、2H)、3.706(N−CH2−C21H43、t、2H)、1.754(N−CH2−CH2−C20H41、m、2H)、1.202(N−CH2−CH2−(CH2)19、m、38H)、0.822(CH3、t、3H)であった。]
[0045] 1−アミノエチル−3−ドコサニルイミダゾリウムブロミド(イオン液体IV)の合成。
イオン液体IVを以下のプロセスを用いて合成し、1H NMRスペクトルによって特徴付けた。合成経路を以下に示す:



約3.76g(0.010mol)の1−ドコサニルイミダゾールと約2.46gの2−ブロモエチルアミンヒドロブロミドを100mLのエタノール中に溶解させ、その後、反応混合物を90℃で24時間還流させた。約100mLのエチルエーテルを加えて生成物を沈殿させ、濾過した後、エチルエーテルで3回洗浄した。粉末生成物を真空炉で乾燥させた。収率は約70.2%であり、融点は約80.5℃であった。1H NMR(溶媒としてDMSO−d6、δ、ppm)のスペクトルは、9.137(N−CH−N、s、1H)、7.791(N−CH−CH、s、1H)、7.756(N−CH−CH、s、1H)、4.410(N−CH2−CH2−NH2、t、2H)、4.133(N−CH2−CH2−NH2、t、2H)、3.638(N−CH2−C21H43、t、2H)、1.769(N−CH2−CH2−C20H41、m、2H)、1.206(N−CH2−CH2−(CH2)19、m、38H)、0.825(CH3、t、3H)であった。]
[0046] イオン液体IIIによるCNFの化学的グラフト化。
図7に記載のプロセスによって、イオン液体IIIによるCNFまたはMWCNTの化学的グラフト化を行った。] 図7
[0047] 図7に示すように、体積比が約H2SO4/HNO3=3:1である濃硝酸および硫酸の混合物により酸化CNFを調製した。約2gのCNFを酸性混合物中に分散させ、約35℃で約5時間音波処理した後、45℃で約24時間攪拌した。最終生成物を0.1μmVVLP膜で濾過し、水、テトラヒドロフラン(THF)、およびエタノールで順次洗浄した。真空炉で乾燥後、酸化CNFをTGA経由で試験し、図8に示すようにカルボニル基の含有量(約13.0%)を推定した。] 図7 図8
[0048] 約0.5gの酸化CNFを50mLの無水THF中に分散させ、氷浴中に置き、反応温度を制御した。過剰量の塩化チオニル(SOCl2)をゆっくり加え、懸濁液を窒素下で約5時間還流させた。THFおよび過剰なSOCl2を完全に除去した後、アシルクロリド基をCNFの表面上に導入した。]
[0049] 約0.5gのアシル化CNFを、イオン液体IIIおよびトリエチルアミンとともに、無水THF中に分散させ、約24時間還流した。濾過後、イオン液体グラフト化CNFを得、水で洗浄し、未反応試薬を全て除去した。最終生成物を真空炉で乾燥させた。]
[0050] 約0.5gのイオン液体グラフト化CNFもしくはMWCNTを約100mLの水中に分散させ、約5gのHPF6を加えて、イオン液体のアニオンを交換した。反応系を24時間攪拌し、濾過し、水で3回洗浄した。生成物を24時間乾燥後、アニオンとしてPF6によりイオン液体グラフト化CNFを得た。]
[0051] イオン液体IVによるCNFの化学的グラフト化。
イオン液体IVによるCNFのグラフト化度は、図8に示すTGA曲線から約35.0%と推定した。イオン液体IVによるCNFの化学的グラフト化は、図9に記載のプロセスによって行った。] 図8 図9
[0052] 図9に示すように、カルボニル基をもつ酸化CNFを1−(3−アミノプロピル)イミダゾールと反応させ、1−ブロモドコサンにより置換した。約0.5gの酸化CNFと5gの1−(3−アミノプロピル)イミダゾールを50mLの無水DMSO中に分散させ、窒素流下で約24時間加熱した。生成物を濾過により分離し、水で洗浄した。乾燥後、5gの1−ブロモドコサンと50mLのアセトニトリルを加えてさらなる置換反応を行い、混合物を24時間還流させた。その後、同じ方法で最終生成物を分離することによって、イオン液体IVグラフト化CNFを得た。] 図9
[0053] 実施例9
修飾CNFおよびUHMWPEに基づいたナノコンポジットフィルムの調製。
実施例3または実施例4からの修飾CNFをデカリン中のUHMWPEと混合した。混合物を攪拌条件下にて約0.2℃/分で約140℃に加熱し、約140℃で約1時間維持した。室温に冷却後、ナノコンポジット試料を濾過により分離し、約60℃の真空炉で乾燥させ、デカリンをほぼ除去した。その後、2軸混合機(DACA instruments)を用いて、試料を約0.5重量%(UHMWPEの量に基づく)の酸化防止剤と、約170℃で約5分間溶融混合した。回収した試料を約80℃の真空炉で乾燥させ、重量を一定にした(0〜200℃の温度範囲内で減量が約0.5%未満になるまでTGAにより測定)。全試料を約180℃で溶融圧縮し、厚さが約0.3mmのフィルムにした。ナノコンポジットの組成物を以下の表4にまとめる。]
[0054] ]
[0055] 実施例10
デカリン中の修飾CNFの安定性の測定。
デカリン洗浄後のCNF表面に固定されたイオン液体の安定性を測定するため、修飾CNFをTGAで試験した。結果を図10に示す。TGA曲線から、修飾CNF(デカリン洗浄後)が、純粋なイオン液体のものとほぼ同一の分解開始温度を示したことが分かる。これは、CNFの表面上に錯体化したイオン液体が、室温でデカリン中で安定であり、通常の洗浄手順によって除去できないことを示すものである。すなわち、修飾CNFのイオン液体は、イオン液体のイミダゾリウムカチオンとCNFのパラ−アレーン表面との間のπ−π相互作用によってCNF表面上に固定することができる。修飾CNFの修飾はまた、ポリマーマトリックス中におけるCNFの均一分散を助けることができる。] 図10
[0056] 実施例11
修飾CNF/UHMWPEナノコンポジットの熱安定性。
溶液ブレンドプロセスを用いて、修飾CNFをUHMWPE中に異なる重量比で分散後、一連のナノコンポジットを得た。修飾CNFを加えることで、図11に示すように、修飾CNF/UHMWPEナノコンポジットの熱安定性が僅かに増すことが分かった。] 図11
[0057] 実施例12
修飾CNF/UHMWPEナノコンポジットの機械的特性。
実施例6で生成した修飾CNF/UHMWPEナノコンポジットの機械的特性について、室温で引張伸張測定することで判断した。N1およびN2の応力ひずみ曲線を示す図12Aに示すように、UHMWPEマトリックス中に修飾CNFを分散させることで、ナノコンポジットの破断伸び率のみならず靭性を増加させることが分かった。図12Bは、N3およびN4の応力ひずみ曲線を示す。同時に、修飾CNF中のイオン液体IまたはIIの割合もナノコンポジットの靭性に影響を及ぼした。具体的には、修飾CNF中のイオン液体Iの割合が増した場合に(CNFの含有量は、一定レベルの約0.2%に維持した)、UHMWPEの靭性はさらに向上した。これは、CNF表面上のイオン液体が、UHMWPE中のCNFの分散を促進するだけでなく、材料の伸び率または靭性を向上させる有向の可塑化効果ももたらすからである。さらに、修飾CNFの特性(例:修飾CNFおよびUHMWPEの相溶性)は、イオン液体の種類、即ち、カチオン性またはアニオン性によって影響を受けることも分かった。例えば、ヘキサフルオロホスファートがブロミドよりも疎水性になるにつれて、修飾CNF中にヘキサフルオロホスファートを導入することで、1−ドコサニル−3−メチルイミダゾリウムブロミドイオン液体Iからのものよりも、より均質な修飾CNF/UHMWPEナノコンポジットをもたらすことができる。これにより、修飾CNF中のイオン液体の割合は同一であったが、ヘキサフルオロホスファート修飾CNFを備えたナノコンポジットの靭性は、ブロミドのものよりも高かった(図12)。] 図12 図12A 図12B
[0058] 実施例13
ナノコンポジットのレオロジー挙動。
レオロジー的検討を180℃で行い、いくつかの興味ある結果を得た(図13を参照)。高周波数領域では、修飾CNFの存在により(純粋なUHMWPEと比較して)、貯蔵弾性率G’および複素粘度η*は両方とも低下した。一方、ナノコンポジットN2のG’値は、その修飾CNFが高含有量のイオン液体を含有したため、N1のものよりも低下した。しかしながら、周波数が0.05s−1未満であった場合、トレンドは逆であった。N3およびN4試料についても同様の結果が得られた。修飾CNF/UHMWPEナノコンポジットにおけるG’およびη*の独特な周波数依存性は、以下のように説明することができる。低周波数では、UHMWPE鎖は、より緩和していた。従って、G’のω依存度は、比較的弱かった。これにより、修飾CNFネットワークは、ナノコンポジットにおける大型ポリマーの緩和運動によって著しく拘束されていた。レオロジー応答は、修飾CNF誘導ネットワーク構造により液体の様ではなく固体の様な粘度挙動を示した。さらに、より良い修飾CNF分散(より良いネットワーク)をもつN2ナノコンポジットは、N1ナノコンポジットよりもさらに影響を受けた。これに対し、高周波数では、修飾CNFは、ポリマー鎖の短距離運動にほどんど影響を及ぼさなかった(特に、長さスケールが絡み合い長さと同程度であった場合)。修飾CNF中にイオン液体が存在することで、可塑化効果によりポリマー鎖をより容易に緩和し、弾性率G’およびη*を減少させた。] 図13
[0059] 実施例14
広角X線回折(WAXD)および小角X線散乱(SAXS)特性。
in−situ広角X線回折(WAXD)および小角X線散乱(SAXS)によって引張実験を監視し、修飾CNF/UHMWPEナノコンポジットにおける靭性改善のメカニズムを調べた。斜方晶系構造および単斜晶系構造の延伸ナノコンポジットが観測された。延伸した0.4%修飾CNFナノコンポジットN2(35%でひずみ)の一般的な2D WAXDパターンを図14に示す。斜方晶系セルおよび単斜晶系セルから対応する反射を以下の表5にまとめる。これは、2D WAXDから35%のひずみにおけるナノコンポジットN2の回折面のパラメータを示す。] 図14
[0060] ]
[0061] UHMWPEの単斜晶系相は準安定であるが、延伸中の斜方晶系相と共存することができる。ナノコンポジットにおいて極めて低濃度であるため、CNFからの回折ピークは無かった。]
[0062] 図15は、引張変形中のN4ナノコンポジット試料の選択したWAXDおよびSAXSパターンを示す。WAXDパターンのみならず(110)斜方晶系反射の対応する方位角プロファイルからa軸配向が存在することが示された。ここで、b軸配向およびc軸配向は回転対称に分布していた。伸張後、c軸配向が支配的な特徴となった。延伸中、a軸配向およびc軸配向の混合物が存在した。伸張処理によって結晶配向が増すことが分かった。SAXSパターンには4点パターンが観測された。これは、表題のラメラ構造が伸張方向において形成されたことを示している。SAXSパターンの散乱特性は、延伸中に4点からストリーク状に連続的に変化した。高ひずみでの全ナノコンポジットの赤道ストリークパターンにより、配向フィブリルまたはミクロボイド構造の存在が示された。これらの結果により、ナノコンポジットの靱性化挙動が確認された。] 図15
[0063] 修飾CNFがUHMWPEを靭性化するメカニズムに影響を及ぼし得る、ナノコンポジットの全結晶化度や、単斜晶系および/または斜方晶系相の貢献度の割合についても、in−situ2D WAXDデータの分析によって測定した。結果を図16に示す。これは、N1試料の伸張処理中におけるナノコンポジットの結晶化度の変化を示す。UHMWPEおよびナノコンポジットの全結晶化度は、延伸中に減少することが分かった。しかしながら、純粋なUHMWPEの結晶化度は、ナノコンポジットのものよりも、同じ伸び率でより速く減少した。これは、イオン液体が「潤滑剤」または「可塑剤」として作用するCNF表面上に固定されているという仮説と一致していた。] 図16
[0064] 従って、固定化イオン液体は、結晶領域と修飾CNFとの間の滑りを促進できることが分かる。これは、UHMWPE中の結晶領域の破壊を遅らせる。修飾CNFにおけるイオン液体の割合が増すにつれて、この効果はより顕著になった。斜方晶系相はひずみにより減少し、その後、単斜晶系相が増したことは興味深い点である。斜方晶系相における結晶破壊の割合は、単斜晶系相における歪誘導結晶化の割合よりも多かった。これは、斜方晶系結晶領域中のいくつかのポリエチレン鎖が引き抜かれ、その割合が単斜晶系相に変換されたことを示す。これが、破断伸び率がナノコンポジット中で改善された主たる理由であろう。]
[0065] 実施例15
イオン液体と錯体化した分子染料の溶出試験。
イオン液体も一種の界面活性剤と考えられる。3つの異なる酸:(a)アシッドイエロー76(黄色染料)、(b)アシッドレッド1(赤色染料)、および(c)アシッドブルー25(青色染料)で溶出試験を行った。それぞれに2本の管を準備した。一方には、染料およびデカリンを含み、他方は、染料、イオン液体、およびデカリンを含んだ。試料調製手順は以下の通りであった。まず、少量の染料およびイオン液体を管で混合し、デカリンを加えた。混合後、混合物を90℃に維持し、撮影した。イオン液体を用いない場合、染料はデカリンに溶解できず、イオン液体が存在する場合、染料は90℃でデカリンに容易に溶解することができた。この結果により、イオン液体を用いて、デカリン中の酸性染料の溶出を補助できることが実証された(通常、染料はデカリンとは混和しない)。この結果は、イオン液体がポリオレフィン中の分子染料の浸透および固定化を補助するため、着色処理が容易になることを示す。]
[0066] 実施例16
修飾MWCNTの追加によるUHMWPEの最大繊維延伸比の向上。
多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の物理的修飾についてもイオン液体によって行った。ゲル紡糸UHMWPEファイバー(UHMWPE)と、化学的にグラフト化したC18鎖および物理的に共役したC22イオン液体をもつMWCNTを含むゲル紡糸UHMWPEナノコンポジット繊維との最大延伸比(UHMWPE/修飾MWCNTナノコンポジット)を図17に示す。延伸処理を2段階で行い、1段階目の延伸比は4xで固定した。0.2重量%のイオン液体修飾MWCNT(iMWCNT)の最大延伸比(「MDR」)は、低温度(80℃)で最も高いMDR値を示したことが分かった。これにより、UHMWPE/iMWCNTナノコンポジットの達成可能なファイバー直径は最小になり、対応するデニールは既存の市販UHMWPEファイバーよりも高くなることが示唆された。] 図17
[0067] 上記から分かるように、疎水性尾部(例:長鎖アルキル−置換基)を含有するイオン液体と共役させることで、新規クラスの表面修飾カーボンナノフィラー(例:単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェンシート、グラファイトナノ粒子)を調製した。このクラスのカーボンナノフィラーは、ポリオレフィン(例:ポリエチレン、ポリプロピレン、およびこれらのランダムおよびブロック共重合体)と相溶可能であった。帯電したイオン液体は、ポリオレフィンマトリックスへの可塑剤(粘度調整剤)として、多成分ポリオレフィンブレンドへの相溶化剤として、カラー染料、分子指紋剤(例:蛍光剤)、および抗菌剤と安定な錯体を形成し得る官能化剤として用いることができる。カーボンナノフィラー(例:単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェンシート、グラファイトナノ粒子)は、表面相互作用を通じて機能性イオン液体を運ぶナノスケールビヒクルとして用いることができ、補強剤としても機能し得る。選択例は、UHMWPEの靭性を向上させるための修飾CNFに基づいた。0.4重量%の修飾CNFを含有することで、純粋なUHMWPEと比較した場合に、破断伸び率が著しく増した。修飾CNF中のイオン液体の割合のみならず、イオン液体の疎水性は、修飾CNFとUHMWPEとの間の相溶性に著しく影響を及ぼし得る。]
実施例

[0068] 上記説明は本開示による方法の多くの具体的な詳細を記載しているが、これらの具体的な詳細は、本開示の範囲を限定的に解釈すべきではなく、好適な実施形態の単なる例示に過ぎない。当業者であれば、本開示の範囲および精神を逸脱することなく多くの他の変更が考えられるであろう。]
权利要求:

請求項1
少なくとも1つのポリオレフィンと、少なくとも1つのイオン液体と、を含み、少なくとも1つのカーボンナノフィラーが少なくとも1つのイオン性化合物と接触して、修飾カーボンナノフィラーを生成するポリマーブレンド。
請求項2
前記少なくとも1つのイオン性化合物が、1−ドコサニル−3−メチルイミダゾリウム、および1−ドコサニル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファートからなる群から選択される請求項1に記載のポリマーブレンド。
請求項3
前記少なくとも1つのイオン性化合物が、イミダゾリウム、ピリジニウム、およびイソキノリニウムからなる群から選択されるカチオンと、ブロミド、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスファート、およびビス(ペルフルオロエチルスルホニル)イミドからなる群から選択されるアニオンとを含む請求項1に記載のポリマーブレンド。
請求項4
前記カーボンナノフィラーが単層ナノチューブを含む請求項1に記載のポリマーブレンド。
請求項5
前記カーボンナノフィラーが多層ナノチューブを含む請求項1に記載のポリマーブレンド。
請求項6
前記カーボンナノフィラーがカーボンナノファイバーを含む請求項1に記載のポリマーブレンド。
請求項7
前記ポリオレフィンが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、超高分子量ポリエチレン、高圧低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、および修飾ポリエチレンからなる群から選択される請求項1に記載のポリマーブレンド。
請求項8
前記ポリオレフィンが超高分子量ポリエチレンを含む請求項1に記載のポリマーブレンド。
請求項9
請求項1に記載のポリマーブレンドを含むファイバー。
請求項10
請求項1に記載のポリマーブレンドを含むフィルム。
請求項11
ポリマーブレンドを作製する方法であって、少なくとも1つのカーボンナノフィラーを得る工程と、前記少なくとも1つのカーボンナノフィラーを少なくとも1つのイオン性化合物で処理し、修飾カーボンナノフィラーを生成する工程と、前記修飾カーボンナノフィラーをポリオレフィンとブレンドして、前記ポリマーブレンドを生成する工程と、を含む方法。
請求項12
少なくとも1つのカーボンナノフィラーを得る工程が、単層カーボンナノチューブを得る工程を含む請求項11に記載の方法。
請求項13
少なくとも1つのカーボンナノフィラーを得る工程が、多層カーボンナノチューブを得る工程を含む請求項11に記載の方法。
請求項14
少なくとも1つのカーボンナノフィラーを得る工程が、カーボンナノファイバーを得る工程を含む請求項11に記載の方法。
請求項15
前記少なくとも1つのカーボンナノフィラーを処理する工程が、前記少なくとも1つのイオン性化合物として、イミダゾリウム、ピリジニウム、およびイソキノリニウムからなる群から選択されるカチオンと、ブロミド、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスファート、およびビス(ペルフルオロエチルスルホニル)イミドからなる群から選択されるアニオンとを選択する工程をさらに含む請求項11に記載の方法。
請求項16
前記少なくとも1つのカーボンナノフィラーを処理する工程が、1−ドコサニル−3−メチルイミダゾリウム、および1−ドコサニル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファートからなる群から前記少なくとも1つのイオン性化合物を選択する工程をさらに含む請求項11に記載の方法。
請求項17
前記少なくとも1つのカーボンナノフィラーを処理する工程が、約70℃の温度で約1時間にわたり前記少なくとも1つのカーボンナノフィラーを前記イオン性化合物とデカリン中で混合させる工程をさらに含む請求項11に記載の方法。
請求項18
前記修飾カーボンナノフィラーをポリオレフィンとブレンドする工程が、前記ポリオレフィンとして超高分子量ポリエチレンを利用する請求項11に記載の方法。
請求項19
前記修飾カーボンナノフィラーをポリオレフィンとブレンドする工程が、前記ポリオレフィンをデカリンと混合してポリオレフィン溶液を生成する工程をさらに含む請求項18に記載の方法。
請求項20
前記修飾カーボンナノフィラーをポリオレフィンとブレンドする工程が、約140℃の温度で約1時間にわたり前記修飾カーボンナノフィラーを前記ポリオレフィン溶液と混合する工程をさらに含む請求項19に記載の方法。
請求項21
請求項11に記載の方法に従って作製されたポリマーブレンド。
請求項22
請求項11に記載の方法に従って作製されたポリマーブレンドを含むファイバー。
請求項23
請求項11に記載の方法に従って作製されたポリマーブレンドを含むフィルム。
請求項24
少なくとも1つのポリオレフィンと、少なくとも1つのイオン液体と、を含むポリマーブレンド。
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引用文献:
公开号 | 申请日 | 公开日 | 申请人 | 专利标题
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